(写真:米国サンフランシスコにて筆者撮影)
今般のWeWorkの米国ナスダック市場への上場申請の延期が話題ですが、今回の件は、ここ10年間のシリコンバレーの一つの傾向を如実に露呈させた、氷山の一角に過ぎないと思います。あまり定量的・客観的データに乏しい、幾分直観的・偏った味方である点、どうかご了解を頂きつつ、今あるスタートアップのエコシステムの重要な役割を果たすべきベンチャーキャピタルに抜け落ちているのおは、ベンチャーキャピタルへの適切なモニタリングが希薄化・形骸化してしまっているというものです。ベンチャーではなく、ベンチャーキャピタリストに対するモニタリングです。日頃、起業家経営者に対するベンチャーキャピタルや出資者による適切な経営面でのアドバイス等のモニタリング、というより、メンタリングについては既に多くの取り組みが成されており、若くてまだ実業経験が乏しかったり、長年のキャリアを捨てた起業家経営者でも起業実務経験に乏しいことへの補完としてのハンズオン支援やモニタリングは活発にされていると思いますが、それらを司るはずのベンチャーキャピタルそのものについては、あまりありそうに感じません。
2000年代以前と比べて、今では多くのベンチャーファンドが立ち上がり、そうしたファンドのGP(General Partner)も若手キャピタリストの台頭が加速化・活躍をしていますが、彼らとて、自分達がサポートをする起業家・スタートアップ同様、社会人/ビジネスパーソンとしては発展途上であるとの考えです。一方、ベンチャーファンドへ出資を行う金融機関や事業会社をはじめとするLP(Limited Partner)はこぞって増えていますが、彼らは、出資をするベンチャーファンドのパフォーマンスをモニタリングする際、ファイナンシャルな要素だけでなく、投資担当者の適切なモニタリングも果たすことが求められると思います。そのようなLPによるVCへのモニタリング機能不全が、最終的には、出資先であるスタートアップのモラルハザードに波及してしまっているものと考えます。実際、VCから投資を受けた起業家経営者から直接耳にする話に基づくと、デューデリジェンスの内容や投資後の経営会議での言動を聞くたびに、筆者がVCを手掛けていたころと比べて愕然とする話が決して少なくありません(あるいは、筆者が気づかない場所で既に日常茶飯事であったのかも)。
キャピタリストの起業家へのモニタリングの質の低下⇒その結果、キャピタリストの未熟化⇒それが、全体的に起業経営者の質の低下
かつては、実業経験が豊富な人材がベンチャーファンドを立ち上げる、という構図が出来上がっていた印象があります。一方、2010年前後からのソーシャルビジネスやアプリ開発系の、フットワークの軽い(開発が決して安易であるという意味ではなく)、投資ライフサイクルがかつての半導体や開発系のベンチャー投資と比べて短い、投資金額も一桁小さいものが主流となった今、キャピタリストの若年層化が起きており、それは業界の活性化においては良い現象ですが、ただし、勢いばかりがついて足元がしっかりしないまま走り続けているような印象です。これは、日本国内と米シリコンバレーの両方で感じること。今回のWeWorkの創業者を1人突っ走り続けさせてしまったことも、出資者とVC担当者とがもっと投資先の経営者を的確に見る仕組みが出来ていれば、もしかしたら超えるべきではない一線は超えずにそのまま成功裏にIPOを果たしてさらなる順調な成長を果たせたのかもしれません(無論、ビジネスそのものは成長していると思いますが)。ベンチャー投資は、同じプライベートエクイティ領域であるバイアウトやターンアラウンド等とは違い、より人間臭さが漂う職種であるとの考えです。そこには、担当者の人間力や成熟度が不可欠ではないかと考えます。
今、WeWorkが経営面で苦しい時期を乗り越えようとする中、我々は改めてこれから、日本国内においてもIPO市況を活性化していくという目標を掲げていくのであれば、投資責任を負うVC、VCへの出資を行う事業会社や金融機関をはじめとするLP、そして当事者である起業家経営者のすべてが取り組んでいくべき良い時期であると思います。
2000年代以前と比べて、今では多くのベンチャーファンドが立ち上がり、そうしたファンドのGP(General Partner)も若手キャピタリストの台頭が加速化・活躍をしていますが、彼らとて、自分達がサポートをする起業家・スタートアップ同様、社会人/ビジネスパーソンとしては発展途上であるとの考えです。一方、ベンチャーファンドへ出資を行う金融機関や事業会社をはじめとするLP(Limited Partner)はこぞって増えていますが、彼らは、出資をするベンチャーファンドのパフォーマンスをモニタリングする際、ファイナンシャルな要素だけでなく、投資担当者の適切なモニタリングも果たすことが求められると思います。そのようなLPによるVCへのモニタリング機能不全が、最終的には、出資先であるスタートアップのモラルハザードに波及してしまっているものと考えます。実際、VCから投資を受けた起業家経営者から直接耳にする話に基づくと、デューデリジェンスの内容や投資後の経営会議での言動を聞くたびに、筆者がVCを手掛けていたころと比べて愕然とする話が決して少なくありません(あるいは、筆者が気づかない場所で既に日常茶飯事であったのかも)。
キャピタリストの起業家へのモニタリングの質の低下⇒その結果、キャピタリストの未熟化⇒それが、全体的に起業経営者の質の低下
かつては、実業経験が豊富な人材がベンチャーファンドを立ち上げる、という構図が出来上がっていた印象があります。一方、2010年前後からのソーシャルビジネスやアプリ開発系の、フットワークの軽い(開発が決して安易であるという意味ではなく)、投資ライフサイクルがかつての半導体や開発系のベンチャー投資と比べて短い、投資金額も一桁小さいものが主流となった今、キャピタリストの若年層化が起きており、それは業界の活性化においては良い現象ですが、ただし、勢いばかりがついて足元がしっかりしないまま走り続けているような印象です。これは、日本国内と米シリコンバレーの両方で感じること。今回のWeWorkの創業者を1人突っ走り続けさせてしまったことも、出資者とVC担当者とがもっと投資先の経営者を的確に見る仕組みが出来ていれば、もしかしたら超えるべきではない一線は超えずにそのまま成功裏にIPOを果たしてさらなる順調な成長を果たせたのかもしれません(無論、ビジネスそのものは成長していると思いますが)。ベンチャー投資は、同じプライベートエクイティ領域であるバイアウトやターンアラウンド等とは違い、より人間臭さが漂う職種であるとの考えです。そこには、担当者の人間力や成熟度が不可欠ではないかと考えます。
今、WeWorkが経営面で苦しい時期を乗り越えようとする中、我々は改めてこれから、日本国内においてもIPO市況を活性化していくという目標を掲げていくのであれば、投資責任を負うVC、VCへの出資を行う事業会社や金融機関をはじめとするLP、そして当事者である起業家経営者のすべてが取り組んでいくべき良い時期であると思います。
備考:(*)https://nvca.org/8-takeaways-8-graphics-historic-2018-venture-capital/ (**)https://www.statista.com/chart/11443/venture-capital-activity-in-the-us/