写真提供:「Neuro Gum: Does Nootropic Chewing Gum Truly Work?」https://shepherdgazette.com/wp-content/uploads/2020/08/image_treatment_nero-gum_200731-720x720.jpg
脳科学領域に注目したさまざまな取り組みがここ1,2年、スタートアップ投資において注目され始めた領域の一つです。直近では、イーロン・マスクによる埋め込み型の脳と機械のインターフェースを開発する新たな脳科学系(“Neuroscience”)企業であるNeuroLink社が豚の脳を使用した開発の進捗状況が報道されて注目されていますが、当該研究領域は人間にとっても解明すべきものが深くまだまだ課題が多いも世用であり、すぐに実用化とマネタイズ化が進む段階にはない状況のようです。
脳神経学領域への主たるスタートアップ投資の直近12年の概況を見ると、以下の通り、2015年以降伸び始めており、2018年には$1.5BNにまで伸びています。主な事例では、Dreem社による2018年6月実施の総額$35MものシリーズC等が挙げられますが、こうした事例を除くと、全体的にはまだ研究開発段階として総じて初期段階のものが多いような印象を受けます。最近俄かに日本国内においても注目をされはじめたトランステック領域を含めて、まだまだ黎明期の段階を経ているようですが、ポスト・コロナの混沌とした世の中を生きていく我々にとって、マインドフルネス領域の一環として当該領域はさまざまアイディアが当面出続けていくと予想されますので、2020年後半から2021年を通じて、自ずと主たるテーマ領域として動きが活発化していくものと予想されますね。主な動機や背景として言われているのは主に以下のような着眼点から来るものかと思われます:
1.については人と人とのリアルな繋がりを促進するテクノロジー(共通趣味等に基づいた新しいオンラインコミュニティプラットフォーム)、2.は遠隔医療をはじめとする各種デジタルヘルスの新たな仕組み作り(例:ウェラブルデバイス、オンライン・セラピー)、そして3.については既に頻繁に触れている領域ですが、HRテクノロジーがこれから活発な取り組みが進みそうです(既に3,4年事例が多い個別領域については今後選別色が強まる過渡期に突入)。
脳科学領域に注目したさまざまな取り組みがここ1,2年、スタートアップ投資において注目され始めた領域の一つです。直近では、イーロン・マスクによる埋め込み型の脳と機械のインターフェースを開発する新たな脳科学系(“Neuroscience”)企業であるNeuroLink社が豚の脳を使用した開発の進捗状況が報道されて注目されていますが、当該研究領域は人間にとっても解明すべきものが深くまだまだ課題が多いも世用であり、すぐに実用化とマネタイズ化が進む段階にはない状況のようです。
脳神経学領域への主たるスタートアップ投資の直近12年の概況を見ると、以下の通り、2015年以降伸び始めており、2018年には$1.5BNにまで伸びています。主な事例では、Dreem社による2018年6月実施の総額$35MものシリーズC等が挙げられますが、こうした事例を除くと、全体的にはまだ研究開発段階として総じて初期段階のものが多いような印象を受けます。最近俄かに日本国内においても注目をされはじめたトランステック領域を含めて、まだまだ黎明期の段階を経ているようですが、ポスト・コロナの混沌とした世の中を生きていく我々にとって、マインドフルネス領域の一環として当該領域はさまざまアイディアが当面出続けていくと予想されますので、2020年後半から2021年を通じて、自ずと主たるテーマ領域として動きが活発化していくものと予想されますね。主な動機や背景として言われているのは主に以下のような着眼点から来るものかと思われます:
- 新型コロナウイルスの感染拡大に伴うソーシャル・ディスタンスの日常化と共に、人とのコミュニケーション不足による孤独感やストレス状態の拡大の可能性への課題認識
- 上述の社会的な孤立と心疾患や発作等のリスク上昇との相関関係に関する課題解決の訴求性の上昇
- 遠隔仕事の日常化に伴う職場環境のストレスへの対処
1.については人と人とのリアルな繋がりを促進するテクノロジー(共通趣味等に基づいた新しいオンラインコミュニティプラットフォーム)、2.は遠隔医療をはじめとする各種デジタルヘルスの新たな仕組み作り(例:ウェラブルデバイス、オンライン・セラピー)、そして3.については既に頻繁に触れている領域ですが、HRテクノロジーがこれから活発な取り組みが進みそうです(既に3,4年事例が多い個別領域については今後選別色が強まる過渡期に突入)。
出所:米Statisita https://www.statista.com/statistics/596310/venture-investments-neurology-companies-us/
前述のDreem社の概要は以下の通り:
Dreemは、マシーンラーニング技術、EEG(Electroencephalogram=脳波)測定電極、加速度センサー、パルス・オキシメータ(酸素飽和度測定)等の技術を駆使しており、それらをうまく活用することで、利用者の睡眠の深さやその時々の身体の睡眠状態を計算し、データ化をすることでその機能を実現させる模様。
私見では脳波の世界は非常にデリケートな領域に思えますから、テクノロジーと実際の我々人間の人体の反応との絶対的な相関関係がどれほど確かなものなのかを十分に証明されるにはもうしばらくは時間を要する気がしますが、Johnson & Johnsonのような大手バイオ・ヘルスケア企業が事業投資に踏み切るこの事例のようなケースが増えていくことでどのように加速化、実用化されていくのか、興味深いところです。最近不眠症気味の筆者にとっても、是非一度試してみたい気持ちにさせられます・・・
※詳しくはこちらをご参考に。
前述のDreem社の概要は以下の通り:
- 社名:Dreem
- 設立:2014年7月(創業:フランス/現・本社サンフランシスコ市)
- 概要:睡眠の質を高めることを目的とする睡眠促進デバイスの研究開発。収集した脳データを活用してリアルタイムでユーザーの睡眠段階を把握し、利用者の睡眠を促進・支援・強化をすることを目指す「スマートスリープヘッドバンド」
- ステージ:シリーズC
- 投資総額:$57M
- 主要投資家:Johnson & Johnson、他
Dreemは、マシーンラーニング技術、EEG(Electroencephalogram=脳波)測定電極、加速度センサー、パルス・オキシメータ(酸素飽和度測定)等の技術を駆使しており、それらをうまく活用することで、利用者の睡眠の深さやその時々の身体の睡眠状態を計算し、データ化をすることでその機能を実現させる模様。
私見では脳波の世界は非常にデリケートな領域に思えますから、テクノロジーと実際の我々人間の人体の反応との絶対的な相関関係がどれほど確かなものなのかを十分に証明されるにはもうしばらくは時間を要する気がしますが、Johnson & Johnsonのような大手バイオ・ヘルスケア企業が事業投資に踏み切るこの事例のようなケースが増えていくことでどのように加速化、実用化されていくのか、興味深いところです。最近不眠症気味の筆者にとっても、是非一度試してみたい気持ちにさせられます・・・
※詳しくはこちらをご参考に。
出所:Dreem社ホームページ・https://medium.com/@gabriel_31154/product-management-on-the-dreem-headband-e8e2e107144
こうした中、興味深いベンチャー企業(但し、まだ謎めいた印象であり、その信憑性に関しては全く未知数…)が、Neuro社です。以下が同社の直近のウェブサイト。今年の初めに大幅に刷新した様子です(自社サイトでの販売機能を強化+ブランドイメージの刷新等)。
こうした中、興味深いベンチャー企業(但し、まだ謎めいた印象であり、その信憑性に関しては全く未知数…)が、Neuro社です。以下が同社の直近のウェブサイト。今年の初めに大幅に刷新した様子です(自社サイトでの販売機能を強化+ブランドイメージの刷新等)。
出典:同社ウェブサイト
同社は【ガムと脳科学】を組み合わせたいわば稀有な存在と言えそうです。言い換えれば、「機能性ガム」の開発製造販売を手掛けるスタートアップ。発端は日系米国人であるケント・ヨシムラ氏と彼の学生時代からの友人であるライアン・チェン氏が二人でロサンゼルスで創業をしたスタートアップです。ただし創業時期は2015年10月ですから2020年9月時点でほぼ5年は経過していますのでそこそこ社歴はあるようすが、投資フェーズ的には公表資料ベースではまだPre-Seed段階(ここまで少額の資金で良くここまで漕ぎ着けることが出来たのが驚きですが、恐らく、未公表ベースでもっと資金は積んでいるものかと推察します):
社名:NeuroGum, Inc.
設立:2015年10月(本社ロサンゼルス市)
事業/製品概要:機能性ガムの開発及び販売<自社Eサイト、食品チェーン店舗等>
特徴:同社のガムには次の素材が含まれる:天然緑茶カフェイン、L-テアニン、B6、およびB12ビタミン。同社の主張によれば、これらの素材が「消費者にエネルギーを与え、精神を落ち着かせ、頭のキレを改善する」効果をもたらすとのこと(※2020年8月末現在、当該主張が科学的な研究結果に基づくとの実証データは確認出来ず)。さらに、完全ヴィーガン、グルテンフリー、アスパルテーム等の人工甘味料不使用、精製糖不使用(Sugar Free)
ステージ:Pre-Seed
投資総額:$22K
特記事項:
どちらかといえば、健康食品、機能性食品の範疇ではなく、Red Bullのような、エネルギーブースター的な、「 Nootropic系(カフェイン系/向知性)」のカテゴリーに属するもので、健康志向的というより、スポーツドリンク/エネルギー系ドリンクのセクターに属するイメージ。スポーツドリンク系のここ2年程度の動きといえば、かつての一人勝ち状態にあったGatoradeの牙城を崩しにかかったBodyarmour社の大躍進が記憶に新しいですね。2017年以降、当該「Alternative Drink(もしくはBeyond Waterと括られる)」領域は、代替プロテイン分野とは別に、比較的手堅く市場が伸びていると見られる領域。ある意味、Soylent社やHuel社をはじめとする「完全栄養食ドリンク」のセグメントと重複する部分もありそうです。同社は、今年1月末に不慮の事故でこの世を去ってしまった元NBAのスタープレーヤーのKobe Bryantさんが投資をしていたスタートアップとしても有名です。
こうしたNeuroのような、「脳科学」的な効果効能(に近いと思われるマーケティング手法)をうたうフードスタートアップで科学的な実証性に乏しいと思われるものは多いと思います。代替プロテインのような研究開発途上の先端領域は「走りながら」人間の健康面に及ぼす効果等に関してデータを集め、互いがデファクトを競うような流れがあるものと思いますが、脳神経学分野はまだまだ科学では解明しきれない要素が恐らく非常にまだ大きい印象がありますので、こうしたNeuroのガムのように「消費者の思考+嗜好に埋め込む」新商品が果たしてどこまでB2C市場で受け入れられていくのか、そして市場が伸びていくのか、正直読みづらい所である気がします。その意味で、VC的にはスタートアップ投資を行う上で慎重になりがちな分野ではある気がします。
ここで一つ参考にしたいのが、日本人にはお馴染みの昔ながらの昆布茶。欧米では「コンブチャ<Kombucha>」であり、以下のグラフの通り、北米では一定層のコンブチャ愛好コミュニティは確率しつつ、今後も着実に伸びていくと予想されています。ただ、欧米で販売されるコンブチャについては、実際に米国人関係者と会話をすると、その健康効果がどこまで信憑性があるのかは幾分「アバウトな」部分も未だに少なくはないと思われます。というか、実際に購入する層の声を聞いてみると、一部のストイックなグループは別として、ある程度「健康そうなイメージ」だけで割と市場が伸びているのではないかと思わされる傾向がありますね。
同社は【ガムと脳科学】を組み合わせたいわば稀有な存在と言えそうです。言い換えれば、「機能性ガム」の開発製造販売を手掛けるスタートアップ。発端は日系米国人であるケント・ヨシムラ氏と彼の学生時代からの友人であるライアン・チェン氏が二人でロサンゼルスで創業をしたスタートアップです。ただし創業時期は2015年10月ですから2020年9月時点でほぼ5年は経過していますのでそこそこ社歴はあるようすが、投資フェーズ的には公表資料ベースではまだPre-Seed段階(ここまで少額の資金で良くここまで漕ぎ着けることが出来たのが驚きですが、恐らく、未公表ベースでもっと資金は積んでいるものかと推察します):
社名:NeuroGum, Inc.
設立:2015年10月(本社ロサンゼルス市)
事業/製品概要:機能性ガムの開発及び販売<自社Eサイト、食品チェーン店舗等>
特徴:同社のガムには次の素材が含まれる:天然緑茶カフェイン、L-テアニン、B6、およびB12ビタミン。同社の主張によれば、これらの素材が「消費者にエネルギーを与え、精神を落ち着かせ、頭のキレを改善する」効果をもたらすとのこと(※2020年8月末現在、当該主張が科学的な研究結果に基づくとの実証データは確認出来ず)。さらに、完全ヴィーガン、グルテンフリー、アスパルテーム等の人工甘味料不使用、精製糖不使用(Sugar Free)
ステージ:Pre-Seed
投資総額:$22K
特記事項:
- 設立当初、米クラウドファンディングサイトのIndiegogoを介してたった3日で500人の個人投資家を成功裏に集める。
- 現在、全米約6,500店舗に流通。
- 全米のクロスフィット・フィットネスプログラムのコミュニティ向けにサンプル配布から、当該インフルエンサーを活かした精力的なマーケティングを実施中
- 特にCOVID-19以降はクロスフィットプログラムの中に当該製品をプログラムに組み込む新しい試みを展開中
どちらかといえば、健康食品、機能性食品の範疇ではなく、Red Bullのような、エネルギーブースター的な、「 Nootropic系(カフェイン系/向知性)」のカテゴリーに属するもので、健康志向的というより、スポーツドリンク/エネルギー系ドリンクのセクターに属するイメージ。スポーツドリンク系のここ2年程度の動きといえば、かつての一人勝ち状態にあったGatoradeの牙城を崩しにかかったBodyarmour社の大躍進が記憶に新しいですね。2017年以降、当該「Alternative Drink(もしくはBeyond Waterと括られる)」領域は、代替プロテイン分野とは別に、比較的手堅く市場が伸びていると見られる領域。ある意味、Soylent社やHuel社をはじめとする「完全栄養食ドリンク」のセグメントと重複する部分もありそうです。同社は、今年1月末に不慮の事故でこの世を去ってしまった元NBAのスタープレーヤーのKobe Bryantさんが投資をしていたスタートアップとしても有名です。
こうしたNeuroのような、「脳科学」的な効果効能(に近いと思われるマーケティング手法)をうたうフードスタートアップで科学的な実証性に乏しいと思われるものは多いと思います。代替プロテインのような研究開発途上の先端領域は「走りながら」人間の健康面に及ぼす効果等に関してデータを集め、互いがデファクトを競うような流れがあるものと思いますが、脳神経学分野はまだまだ科学では解明しきれない要素が恐らく非常にまだ大きい印象がありますので、こうしたNeuroのガムのように「消費者の思考+嗜好に埋め込む」新商品が果たしてどこまでB2C市場で受け入れられていくのか、そして市場が伸びていくのか、正直読みづらい所である気がします。その意味で、VC的にはスタートアップ投資を行う上で慎重になりがちな分野ではある気がします。
ここで一つ参考にしたいのが、日本人にはお馴染みの昔ながらの昆布茶。欧米では「コンブチャ<Kombucha>」であり、以下のグラフの通り、北米では一定層のコンブチャ愛好コミュニティは確率しつつ、今後も着実に伸びていくと予想されています。ただ、欧米で販売されるコンブチャについては、実際に米国人関係者と会話をすると、その健康効果がどこまで信憑性があるのかは幾分「アバウトな」部分も未だに少なくはないと思われます。というか、実際に購入する層の声を聞いてみると、一部のストイックなグループは別として、ある程度「健康そうなイメージ」だけで割と市場が伸びているのではないかと思わされる傾向がありますね。
出典: 米Grand View Research, Inc.:https://www.grandviewresearch.com/industry-analysis/kombucha-market
とはいえ、そんなコンブチャ市場も一定の科学的な実証研究は米国でも着実に進んでいるようであり(*)、こうした先例を踏まえてNeuroのガムも今後は彼らが主張をするような効果効能についてある一定の実証データが集まれば、コンブチャのように大衆市場の一部を獲得するくらいまでに果たして伸びるのか、このところ堅実に伸びているNeuroscience領域の動向の一つとして、そして、フードテックの範疇でもふと興味深く見守りたいスタートアップです。
備考(*):
「Kombucha: a systematic review of the empirical evidence of human health benefit」 https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1047279718307385
参考:
自然科学研究機構生理学研究所: https://www.nips.ac.jp/sp/release/2008/12/post_13.html
自然科学研究機構・生理学研究所・柿木隆介名誉教授: https://kamukoto.jp/brain/854
とはいえ、そんなコンブチャ市場も一定の科学的な実証研究は米国でも着実に進んでいるようであり(*)、こうした先例を踏まえてNeuroのガムも今後は彼らが主張をするような効果効能についてある一定の実証データが集まれば、コンブチャのように大衆市場の一部を獲得するくらいまでに果たして伸びるのか、このところ堅実に伸びているNeuroscience領域の動向の一つとして、そして、フードテックの範疇でもふと興味深く見守りたいスタートアップです。
備考(*):
「Kombucha: a systematic review of the empirical evidence of human health benefit」 https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1047279718307385
参考:
自然科学研究機構生理学研究所: https://www.nips.ac.jp/sp/release/2008/12/post_13.html
自然科学研究機構・生理学研究所・柿木隆介名誉教授: https://kamukoto.jp/brain/854