もともと米名門カーネギーメロン大学でロボティックスのPhDを取得した若き秀才ですが、元々は起業家魂が豊富であったようで、学問の世界で一生涯を終えてしまうのではなく、あくまで実業の世界でその能力を最大限に引き出していくことにエネルギーを注ぐ人生を選択した彼。ZipZapPlayはソーシャルゲームの開発を手掛ける比較的小規模でありながら極めて開発力の優れた優秀なスタートアップとしての評価とポジショニングに成功し(売却時も17名程度のスタッフ)、主にBaking LifeやHappy Acquarium等の作品を世に送り込んでいます。彼らが手掛ける作品については高い評価を得ることが多く、輝かしく順風満帆に見えるこうした中でも、一時は苦境に立たされる時期を味わいます。詳細は本稿では割愛するとして、事業モデルとターゲットユーザーが定まらず、結果として事業が拡大しない空回り状態が続いていた模様。いわゆる「いいものを作っているのになぜ売れない?なぜマネタイズできない??」の罠にはまることとなります。そうした中、まずは手堅くユーザーを取り込める見込みの高いものを堅実に作りこんで行きながらキャッシュを生み、そこで得たキャッシュを使って次に当初から思い描いていた画期的な作品に経営資源を集中させるという段階ステップを踏むことで事業がうまく回り始めたようで、その結果、前述のような展開に発展をしていくこととなります。
起業家として酸いも甘いも経験してきた彼ですが、現在はPopCapを離れ、昨年後半に立ち上げた新たなスタートアップ(現在、“ステルスモード”)の立ち上げ期で多忙を極めています。ちょうど我々のWild Camp 2015の時期と重なるか否かのタイミングでその方向性が決まるそうです。 そんな彼が、日本をはじめとする「英語を母国語としない諸外国」から米シリコンバレーで起業をする(テックでなくても)人達に対して非常に参考となることを言っています。 彼がそんな見方について、トピックに取り纏めてみたのが以下です。これらは日本で起業をされ、事業を拡大されていく方々にも十分に参考となるものだと思います:
起業家が市場の求めるものを正しく把握することについて-
“極めて単純な話だが、市場のフィットを探し当てることが出来るか否かに尽きる。具体的には、「売上」が立つか、あるいは最初のうちは売上計上まで至らなくても「ユーザー」が一人でもあるいは少しでもついてきてくれているか(単に一発で終わるのではなく、きちんとリピーターとして顧客として定着してくれるというレベル)。それがまずは市場を正しく理解しているかを見極める上での最初の一歩。そのために必要なのは、忍耐力が備わった情熱だと思う。自らが取り組むと決めた領域/分野でしばらくコミットをするという情熱と、あらゆるフィードバックに常に謙虚に耳を傾けていけるか、そしてそれらに呼応して行き、必要な改善をよちよち歩きでも続けて行くことが出来る忍耐力。一言では言えないが、j実はこれに関しては、例えばB2Bなのか、B2Cなのかによっても多少は違ってくるものだ。話し出せば長くなるので割愛するが、ポイントは情熱と忍耐力。”
シリコンバレーで成功裏に事業を手掛けるコツ-
“未だにここシリコンバレーにだけあって世界のどの「第2のシリコンバレー」も持ち得ていないのは、VCと他の起業家とのネットワークの広がり方。これら二つが共に完全に揃っているのがここしかないように思える。特に後者については、自分と似たフィールドを営む他の起業家仲間を指しており、単なるネットワーキングというレベルの話ではない。自分が今必要とするビジネスを取る上で惜しみなくアドバイスやくれたり手を差し伸べてくれるような横の繋がりのことである。それらをいかに自分のものに出来るか、いかにそのコミュニティに自ら溶け込んで行けるか、それがカギだと思う。”
英語を母国語としない、諸外国から米シリコンバレーに来る起業家が現地の他の起業家/スタートアップと対等に競う上での心掛ける点-
“まず、言葉の問題を抜きにして、一つには自らの情熱と自分自身の対象分野での経験についてわかりやすく相手に伝え切る能力が必要だ。もちろんそれとあわせて、良いアイディアと共に、なぜそれが注力するに値する分野であるのかをはっきりと伝えきれないといけない。ところが、それらに必要な最も的確な言葉の表現や言い回しを選ぶということは、英語圏の者ではないと確かに容易ではないと思う。そういうときにこそ、(前述のように)少しでも既に取り組んでいる製商品やサービスが見せられる状態であると非常に良い。さらに理想的なのは、ほんのちょっとだけでも良いからお客さんがついているという客観的な統計が取れていれば尚良い(数名だけでも、少なくともそれは「実績」「行動力」として貴重な意味合いと説得力をもつ)。幸か不幸か、最近言えることなのだが、今のVCの多くは、ある程度のモノやサービス(≒MVP<Minimum-Viable-Product>)が出来上がった状態のスタートアップしか相手にしてくれない。もちろん全てとは言い切れないが。例えプロトタイプ的なものに過ぎなくても、有言実行出来ていることを証明する必要がある。 そして、何よりも、そのプロトタイプが自社の言うとおりのビジョンとターゲット市場が必要とするものだということが説得出来る、さらに他社に比してもそれほど見劣りしない水準であること。これらを満たすことが出来れば、例え言葉の壁があろうともそれを乗り越えてしまうことが十分可能だ。
とりわけ、VCという人たちは「どんなことがあろうとも足を止めない」ようなタイプの人を追い求める。そして、彼らは、その人との会話やその人の過去の経歴、そして立ち振る舞いでそれらを判断しようとするものだ。従って、彼らに対して敬意をもって接しなければならないとか、彼らが言うことに対して率直に疑念を持つことがいきないといった誤解は解くべきだ。彼らは、どんな批判に対しても謙虚に対応ができる能力にたけた人間を好むものだ。アメリカにはあまりなくてアジアにあるとてもすばらしい文化として相手を敬うというしきたりがあると思うが、彼らは必ずしもそれを求めていない。率直にいって、彼らはむしろなぜ彼らの前提条件が誤りであり、なぜ貴方のアイディアが課題解決方法となり得るのかと愚直に語りかけてもらう方がよっぽど痛快に思うだろう。その方が彼らは刺激になるし喜ぶものだ”
シリコンバレーでVCや外部投資家とどううまくやるか(デューデリ/タームシートの交渉等)―
“信頼のおける弁護士を雇うこと。それと、なるべく多くのVCや潜在投資家とネゴをすること。決して最初のごくわずかなVC連中との旨い会話に乗ってしまって即決してしまわないことだ。 ”
-注: 上記は同氏との会話を通じて筆者が翻訳をしており、表現の一部について意訳等をしています。