米Beyond Meat社が先般米Nasdaqに華橋く上場をしてから、Impossible Foods社のUS$300Millionの追加投資をはじめ、米国の培養肉・植物性肉等、いわゆる”New New Protein”分野は活気を帯びっぱなしの情勢が続いている様子ですが、この植物性肉=Plant-based Meatの概念および取り組みは、実は昨今のFood Startupのトレンドとして話題沸騰する実に40年以上も前から、具体的に始まっていたようです。
米国東海岸マサチューセッツ州に本社を置くLightLife社は、1979年に創業された植物性肉のブランドで、今年2019年は創業40周年を迎えたこととなります。同社は、30種類もの商品を販売しており、2000年に米食品加工ブランド大手のConagra Brands社に買収され、その後、投資会社の傘下入りを経て、2017年カナダの大手食品加工メーカーのMaple Leaf Foods社にUS$140 Millionで買収されました。これは、この前のBeyond Meat社の時価総額の約10分の1程度。尚、1997年のConagra社への売却当時、従業員は90人程度、年商約US$25Million(≒25億円)であった模様。
同社ウェブサイト: https://lightlife.com/
同社の肉は、”Pea-Protein”すなわち、エンドウ豆由来の肉を使用しているとのこと。曰く、彼らのLightLife Burger一個につき、”20gのタンパク質を含み、コレステロールは含まず、大豆、グルテン、GMOは含まれていない”とのこと。
フード系のムーブメントは、ここ3,4年で生まれた現象ではありますが、本質的に同じようなことを、実は半世紀近く前からこうしたブランドが粛々と手掛けていたところに、“「誰も手掛けたことのない」と信じ込んでいたのが実際には世の中のどこかで誰かが既に手掛けている”という、スタートアップにありがちな「Only One」思想が実は妄想・錯覚にすぎないという証の一つである気がします。やはり、バズるか否かは「タイミング」に尽きるのかもしれませんが、こうして40年もの歳月を経て、老舗ブランドが新生スタートアップ群と肩を並べて商品戦略でしのぎを削る様子を、興味深く見守りたいですね。また、試しに買って食べたいと思います。巷の噂(サンフランシスコ/シリコンバレー界隈の面々からのコメント)では、Beyond Meat社のバーガーは「まるでペットフードのような」味がするらしい。。そもそもペットフードを食べたことがあるのでしょうか?・・・とにかく、新興勢力に対して、老舗ブランドの逆襲の構図の中で、消費者が最終的に受け入れる商品をどう届けて行くか、興味深いです。特に、「食ビジネス」を長年手掛けてきたブランドと、テック系出身の面々に栄養士や科学のエリートを擁するフード系スタートアップの提供する食・製品には、どこか本質的に大きな違いがありそうです。
とはいえ、食事業で「売れる」為に肝心なのは、栄養価や健康への波及効果もさることながら、結局のところやはり、「味」と「口触り」、「満腹感・満足感」といった要素が大きいような気がします。アメリカで生活をしていると、案外この「味」が未だ改善の余地が沢山ありそうな気がしてなりません。欧米の外食チェーンや食品ブランドが日本進出をする事例と重ね合わせてみたくなりますが、概ね日本で一定の成果を上げたと考えられる事例を見ると、日本人の味覚や触感のツボを上手く抑えたケースが成功を収めている気がします。日本から米国に行ったケースでは、シリコンバレーのハートを掴んだ伊藤園のペットボトルのお茶が判りやすい成功事例かと思います。
とにかく、このLightlife社は、小さな家族経営的に創業後、地道に事業を拡大し、年商で日本円30億円前後までの成長を経て大手企業に買収~投資会社の傘下~再びカナダの大手食品メーカーのグループ入り…という紆余曲折の歴史を経て今、VCや著名エンジェルからの大型投資を受けてメディアからも持て囃される新興勢力と同じ土俵で競い合うという構図は興味深いものがあります。
いずれにせよ、アメリカで培養肉・植物性肉製品を口にすることがあれば、いろいろなブランドを食べ比べてみるのが面白い時期かもしれません。