(Photo Courtesy: e-net shop株式会社)
MVPと言えば、まず頭に思い浮かぶのはスポーツの世界で最優秀選手に称えられる“Most-Valuable-Player”。しかし、今回のテーマである“MVP”とはこれとは全く異なります。スタートアップの経営に携わる方々や企業組織等で新規事業を手掛けられる方々にとっては今や一般化されつつある(少なくとも欧米では)概念ですが、それは、“Minimum-Viable-Product(以下「MVP」と表記)”の略称です。MVPとは、いわば、"とある会社がその事業本来のサービスや製商品の最も初期的な段階のもの"を指すと言えます(※より的確な学術的/専門的定義は本稿では割愛します)が、これは、米シリコンバレーにおいても大変重要な役割を果たします。
では、どういう役割の事を指すのか?
それは、<※投資家や事業会社を説得させる役割を果たす>ということです。言い換えれば、いくらすばらしく斬新なアイディアであっても、それらを熱く語ったところで、このMVPまで行き届いていなければ、その相手に対する説得力は格段に弱まるケースが殆どであるということです。
前述のとおり、MVPとは、一般的に「実用最小限度の用途を取り揃えた製品」「当該製商品の実用性等の検証に必要な最低限の機能を持った製品」といった表現が用いられ、いずれも妥当な表現であると考えられます。あるいは、「※当該製商品/サービスのターゲットとする利用者/ユーザーがその基本的な付加価値を容易に理解できるような単純な製品」と表記するとよりしっくりときます。
では、投資家やそのスタートアップとビジネスを共にしようと考える事業会社がMVPを通じて何を見極めようとするのか。それは、まず、そのスタートアップの経営者/経営チームの実行力を見るのです。VCなどは数多くのビジネスプランとそれらのビジネスを手掛けられる膨大な経営者/起業家の方々とお話をする機会に恵まれていますが、手元に来る資料が膨大であればあるほど、一つ一つ小まめに見る時間的な余裕は全くなくなります。その場合、少しでも他よりも抜きん出たものがあると彼らの目に留まる可能性が高まります。特に、唯一無二の事業プランというものはこの世においてはほぼ皆無に等しいわけですから(例え経営者自身がそう信じていても)、数多くの<プラン(Plan)>が山積みする中、<ドゥー(Do)>までを半歩先まででも実際に踏み入れているのとそうでないのとでは想像出来る以上にはるかに大きな差別化が図れる可能性が高いです。従って、まずは経営者を含む創業メンバー自らが、各々出来得ることを100%のところまで自前だけで成し遂げられていれば、結果的に、その会社が本気かどうか、行動を伴わない中途半端な創業/経営チームでないか否かの良き判断材料となり得るということです。殊に米シリコンバレー(恐らく日本やアジアにおいてももはや一緒と思われますが)においては、「“So what’s your Minimum Viable Product?”」という会話は枕詞となっています。もちろん、ハード/ソフトの製商品のみならず、サービス関連事業においても同様です。
例えば、日本国内に留まらないEC(Eコマース/ソーシャルコマース)であれば、たった一つの製品だけでもまずは実際に商売として売り遂げられたか、そのECサイトを利用されたユーザーがどれだけ存在をし、どういうフィードバックやTestimonialsを得られたか、それぞれの国で異なる事象に遭遇したか(法的な側面で何等か当初には予期せぬ壁にぶつかったか否か、等)、国際間の決済がうまく行かなかった事例はなかったか、それにどう対応したのか、品物(物品の場合)は壊れたか否か、など、投資家がデューデリジェンス(投資実行前の一連の投資検討審査のプロセス)上の懸念事項の各々に対する実証結果が、初期的なサービスをとりあえずは実行してみることによってそこには用意されているわけです。ソフトウェア/アプリ等であれば、バグがあるか否か、ハードウェアであれば使い勝手は想定と比べて実際にはどうか、等ですね。前述のECの場合の簡単なケースを見ても、投資デューデリジェンスの3本柱のうちの二つである事業デューデリ、法的デューデリ(残りはフィナンシャル・デューデリ)の要素を幾分何等か検証できる客観材料が生まれると考えられます。もちろん、本格的なデューデリジェンスに要求されるような質の要素が出そろうかは別ですが、そんなことはどうでも良いのです。
さらに、その事業の潜在的な市場規模を検証する上での客観的な参考データとして大変重宝される可能性も十分にあります。特に、投資家等のほとんどは、前例のないブラックボックスそのものに資金を投入するというリスクを抱えているため、米シリコンバレーであろうが日本国内であろうが関係なく、何らか将来を予想する良き手がかりがあればあるほど心理的なリスクを和らげる効果が期待できます。そして、MVPを経ていざ本格的にサービスインをする場合に(その段階では最初の外部資金 => VC/エンジェル資金が取り入れられているケースが少なくないと思います)、設立当初(アイディアベースの段階)のビジネスプランと様変わりをする可能性も十分ありますが、それは単衣に事業性がより高まったものとなっていることが十分考えられます。
要は、ここでは、MVPの学術的な定義について正解を追求するのが目的ではなく、MVPが米シリコンバレーでは一種のリトマス紙としていわば常識化した状態にある点を共有/指摘しておきたいということです。良くBootstrapという表現が今では聞きなれた言葉となりつつありますが、スタートアップが手元資金でどこまで自らの手で(そして周囲の協力をどこまで得られて)前進しきれるか(すなわち、Bootstrap出来るか)、投資家がその経営者や経営陣の素養や素質を見極める上でとても大切な指標となります。なぜなら、ベンチャー投資においては、日本も含め、米シリコンバレーではそれこそ「人に投資をする」という概念が浸透しているからです。その他、MVPを意識することによって、さまざまな付随効果も得られるものと推察致します<例:事業を一通りあるレベルまでやり通す/試すことによるスタートアップの創業者としての自己検証の機会、事業にスピード感が出る、など>
末筆ながら、今までに実務・経営経験が乏しいと思われるような創業経営者/チームにとって、MVPは、客観的に自分達がある程度事業を回せる力を証明出来る手段となろうかと思います。良く「貴方はまだ実務経験がないから・・・」との文句で話が前に遅々として進まないケースが多いですが、それって「鶏と卵」のような話であるように思えてなりません。そういう”naysayer”を黙らせる上で、MVPは一つの良い材料となるかと思います。
-米国
では、どういう役割の事を指すのか?
それは、<※投資家や事業会社を説得させる役割を果たす>ということです。言い換えれば、いくらすばらしく斬新なアイディアであっても、それらを熱く語ったところで、このMVPまで行き届いていなければ、その相手に対する説得力は格段に弱まるケースが殆どであるということです。
前述のとおり、MVPとは、一般的に「実用最小限度の用途を取り揃えた製品」「当該製商品の実用性等の検証に必要な最低限の機能を持った製品」といった表現が用いられ、いずれも妥当な表現であると考えられます。あるいは、「※当該製商品/サービスのターゲットとする利用者/ユーザーがその基本的な付加価値を容易に理解できるような単純な製品」と表記するとよりしっくりときます。
では、投資家やそのスタートアップとビジネスを共にしようと考える事業会社がMVPを通じて何を見極めようとするのか。それは、まず、そのスタートアップの経営者/経営チームの実行力を見るのです。VCなどは数多くのビジネスプランとそれらのビジネスを手掛けられる膨大な経営者/起業家の方々とお話をする機会に恵まれていますが、手元に来る資料が膨大であればあるほど、一つ一つ小まめに見る時間的な余裕は全くなくなります。その場合、少しでも他よりも抜きん出たものがあると彼らの目に留まる可能性が高まります。特に、唯一無二の事業プランというものはこの世においてはほぼ皆無に等しいわけですから(例え経営者自身がそう信じていても)、数多くの<プラン(Plan)>が山積みする中、<ドゥー(Do)>までを半歩先まででも実際に踏み入れているのとそうでないのとでは想像出来る以上にはるかに大きな差別化が図れる可能性が高いです。従って、まずは経営者を含む創業メンバー自らが、各々出来得ることを100%のところまで自前だけで成し遂げられていれば、結果的に、その会社が本気かどうか、行動を伴わない中途半端な創業/経営チームでないか否かの良き判断材料となり得るということです。殊に米シリコンバレー(恐らく日本やアジアにおいてももはや一緒と思われますが)においては、「“So what’s your Minimum Viable Product?”」という会話は枕詞となっています。もちろん、ハード/ソフトの製商品のみならず、サービス関連事業においても同様です。
例えば、日本国内に留まらないEC(Eコマース/ソーシャルコマース)であれば、たった一つの製品だけでもまずは実際に商売として売り遂げられたか、そのECサイトを利用されたユーザーがどれだけ存在をし、どういうフィードバックやTestimonialsを得られたか、それぞれの国で異なる事象に遭遇したか(法的な側面で何等か当初には予期せぬ壁にぶつかったか否か、等)、国際間の決済がうまく行かなかった事例はなかったか、それにどう対応したのか、品物(物品の場合)は壊れたか否か、など、投資家がデューデリジェンス(投資実行前の一連の投資検討審査のプロセス)上の懸念事項の各々に対する実証結果が、初期的なサービスをとりあえずは実行してみることによってそこには用意されているわけです。ソフトウェア/アプリ等であれば、バグがあるか否か、ハードウェアであれば使い勝手は想定と比べて実際にはどうか、等ですね。前述のECの場合の簡単なケースを見ても、投資デューデリジェンスの3本柱のうちの二つである事業デューデリ、法的デューデリ(残りはフィナンシャル・デューデリ)の要素を幾分何等か検証できる客観材料が生まれると考えられます。もちろん、本格的なデューデリジェンスに要求されるような質の要素が出そろうかは別ですが、そんなことはどうでも良いのです。
さらに、その事業の潜在的な市場規模を検証する上での客観的な参考データとして大変重宝される可能性も十分にあります。特に、投資家等のほとんどは、前例のないブラックボックスそのものに資金を投入するというリスクを抱えているため、米シリコンバレーであろうが日本国内であろうが関係なく、何らか将来を予想する良き手がかりがあればあるほど心理的なリスクを和らげる効果が期待できます。そして、MVPを経ていざ本格的にサービスインをする場合に(その段階では最初の外部資金 => VC/エンジェル資金が取り入れられているケースが少なくないと思います)、設立当初(アイディアベースの段階)のビジネスプランと様変わりをする可能性も十分ありますが、それは単衣に事業性がより高まったものとなっていることが十分考えられます。
要は、ここでは、MVPの学術的な定義について正解を追求するのが目的ではなく、MVPが米シリコンバレーでは一種のリトマス紙としていわば常識化した状態にある点を共有/指摘しておきたいということです。良くBootstrapという表現が今では聞きなれた言葉となりつつありますが、スタートアップが手元資金でどこまで自らの手で(そして周囲の協力をどこまで得られて)前進しきれるか(すなわち、Bootstrap出来るか)、投資家がその経営者や経営陣の素養や素質を見極める上でとても大切な指標となります。なぜなら、ベンチャー投資においては、日本も含め、米シリコンバレーではそれこそ「人に投資をする」という概念が浸透しているからです。その他、MVPを意識することによって、さまざまな付随効果も得られるものと推察致します<例:事業を一通りあるレベルまでやり通す/試すことによるスタートアップの創業者としての自己検証の機会、事業にスピード感が出る、など>
末筆ながら、今までに実務・経営経験が乏しいと思われるような創業経営者/チームにとって、MVPは、客観的に自分達がある程度事業を回せる力を証明出来る手段となろうかと思います。良く「貴方はまだ実務経験がないから・・・」との文句で話が前に遅々として進まないケースが多いですが、それって「鶏と卵」のような話であるように思えてなりません。そういう”naysayer”を黙らせる上で、MVPは一つの良い材料となるかと思います。
-米国