(写真:米サンフランシスコのCo-Workingスペース<Runway Incubator>にて撮影。)
国内ベンチャー投資関係者や、起業家、スタートアップの面々とディスカッションをさせて頂く機会がここ2,3か月増えていますが、各種公表数値があらわすデータとは少々異なる事象を耳にすることが多くなりました。それは、日本国内のベンチャー関連投資全体に占める「創業期~シード段階のエンジェル/シード投資」比重が欧米と比べて極めて少ないという悩ましい点です。
最近、巷では、日本のVC投資がここ数年の中でも活発化し、以前と比べてスタートアップにとってファンドレイズに主眼を置いた起業環境はかなり好転している会話を良く耳にします。具体的に国内で運用されるVC総額、投資額とも5年前と比べてもかなり大きくなり、日本においても欧米並みのリスクマネーが豊富になったとの考え方のようです。筆者がVC投資に関わり始めた今から10年前であれば、国内VC投資の1件あたりの投資額の平均は1億円にも満たないもので、3億円であればかなりの大型ファンディングに受け止められるような世界でした。それが、今では、最低1億円、大型投資であれば1件あたり10億円もそれほど珍しくなくなったというのが、今尚国内VC投資に従事をされる面々のコメント。
しかしながら、それはほんの一握りのテーマに沿った一部のスタートアップに集中している結果であり、必ずしも全体がその恩恵を受けているとは到底考えられないのが現状のようです。つまり、「右を倣え」の如く人気案件に一極集中し、それ以外は閑散とした状況であるということ。
スタートアップ(スモールビジネスを含まず、あくまで5年‐7年以内にIPOやM&A等で一定規模以上の成長カーブを想定したベンチャー企業を指します)が創業されて、事業が0から1へ、そして1から10へ成長していく過程で、何度か外部投資家からの出資を行うケースが一般的ですが、大まかに時系列に列挙すると次のようなイメージになろうかと思います:
このうち、ステージ3~ステージ5(並びにPre-IPO迄)に対しては、日本でもそれなりに潤沢なVC投資資金があるようですが、”まだ右か左か見極めがつけられにくい”1~3段階の立ち上げ期のスタートアップにとって、支援体制含めてファンドレイズの相手にされるケースは極めて希薄のようです。このことが、未だに多くの起業家予備軍の心理的な壁となっているのが複数の起業家やスタートアップ創業者の口から良く耳にします。シリコンバレーでも、”まだ右か左か見極めがつけられにくい”1~3段階の立ち上げ期のスタートアップに対してVCが積極的に投資を行うケースは確かにそれほど多くはありませんが(あっても、実績のある起業家が創業した場合に限られたり、よほど面白い、等)、同時にそれらを補うエンジェルやシードマネー、コーチング/メンタリングもそれなりに存在します。その結果、日本と比べて米国内の創業期のスタートアップにとっては各段に環境は整備されており、それこそ、本当の意味での「リスクマネー」が欧米と比べて日本では全く存在しないに等しいと表現してもあながち大きな誤りでは決してないと思います。
日米のベンチャー投資に関する興味深いデータとして、以下を上げたいと思います:
単純に数値を横比較するだけでは必ずしも正しいとは言い切れませんが、上記のデータを見てもわかる通り、ベンチャー投資全体に対する創立間もない初期のエンジェル~シード投資の比重が、米国と比べてあまりに小さいことが如実に物語っています。これこそ、日本国内でテーマ的にも地理的にも幅広い起業家層が中々育たない大きな足枷要因となっていると考えられます。この、「空洞スペース」をいかに日本のスタートアップ・エコシステムが埋め合わせをしていくことが出来るかが、引き続き今後の課題であるように思えます。
米Wildcard Incubatorは、この、「創業期~MVP完成/初期マーケティング/プレ・シリーズA」フェーズのスタートアップや起業家で米国での本格展開を目指すクライアントを米国と日本とで地道に泥臭く後方支援していくことで、貴重な役割を果たすことをこれからも目指します。
最近、巷では、日本のVC投資がここ数年の中でも活発化し、以前と比べてスタートアップにとってファンドレイズに主眼を置いた起業環境はかなり好転している会話を良く耳にします。具体的に国内で運用されるVC総額、投資額とも5年前と比べてもかなり大きくなり、日本においても欧米並みのリスクマネーが豊富になったとの考え方のようです。筆者がVC投資に関わり始めた今から10年前であれば、国内VC投資の1件あたりの投資額の平均は1億円にも満たないもので、3億円であればかなりの大型ファンディングに受け止められるような世界でした。それが、今では、最低1億円、大型投資であれば1件あたり10億円もそれほど珍しくなくなったというのが、今尚国内VC投資に従事をされる面々のコメント。
しかしながら、それはほんの一握りのテーマに沿った一部のスタートアップに集中している結果であり、必ずしも全体がその恩恵を受けているとは到底考えられないのが現状のようです。つまり、「右を倣え」の如く人気案件に一極集中し、それ以外は閑散とした状況であるということ。
スタートアップ(スモールビジネスを含まず、あくまで5年‐7年以内にIPOやM&A等で一定規模以上の成長カーブを想定したベンチャー企業を指します)が創業されて、事業が0から1へ、そして1から10へ成長していく過程で、何度か外部投資家からの出資を行うケースが一般的ですが、大まかに時系列に列挙すると次のようなイメージになろうかと思います:
- 立ち上げ間もない、アイディアをOから1に具現化していく、いわゆる「ゼロイチ」ステージ
- プロトタイプ、MVP(Minimum-Viable-Product)が出来上がるまでの初期ステージ
- MVPが完成し、ある程度の材料が揃ってこれから精力的に営業活動をかけたいステージ
- ステージ3を経て成長カーブを描き始めるステージ
- ステージ4を経て、資金繰りサイクルが安定し、さらなるスケールアップを加速していくステージ
- Pre-IPO、グロース・ステージ・・・
このうち、ステージ3~ステージ5(並びにPre-IPO迄)に対しては、日本でもそれなりに潤沢なVC投資資金があるようですが、”まだ右か左か見極めがつけられにくい”1~3段階の立ち上げ期のスタートアップにとって、支援体制含めてファンドレイズの相手にされるケースは極めて希薄のようです。このことが、未だに多くの起業家予備軍の心理的な壁となっているのが複数の起業家やスタートアップ創業者の口から良く耳にします。シリコンバレーでも、”まだ右か左か見極めがつけられにくい”1~3段階の立ち上げ期のスタートアップに対してVCが積極的に投資を行うケースは確かにそれほど多くはありませんが(あっても、実績のある起業家が創業した場合に限られたり、よほど面白い、等)、同時にそれらを補うエンジェルやシードマネー、コーチング/メンタリングもそれなりに存在します。その結果、日本と比べて米国内の創業期のスタートアップにとっては各段に環境は整備されており、それこそ、本当の意味での「リスクマネー」が欧米と比べて日本では全く存在しないに等しいと表現してもあながち大きな誤りでは決してないと思います。
日米のベンチャー投資に関する興味深いデータとして、以下を上げたいと思います:
- 2013年米国エンジェル投資額248億米ドル(約2.7兆円)
- 同件数71,000件
- 1件あたりエンジェル投資ラウンド規模:950千米ドル(約1億円)
- VC投資総額296億米ドル(約3.3兆円)
- 対VC投資額比率:81%
- 2011年日本国内エンジェル投資額9.9億円
- 件数45件
- 1件あたり未公開企業投資ラウンド規模(中央値):7,250万円(2014年)
- VC投資総額1,240億円
- 対VC投資額比率:0.8%
単純に数値を横比較するだけでは必ずしも正しいとは言い切れませんが、上記のデータを見てもわかる通り、ベンチャー投資全体に対する創立間もない初期のエンジェル~シード投資の比重が、米国と比べてあまりに小さいことが如実に物語っています。これこそ、日本国内でテーマ的にも地理的にも幅広い起業家層が中々育たない大きな足枷要因となっていると考えられます。この、「空洞スペース」をいかに日本のスタートアップ・エコシステムが埋め合わせをしていくことが出来るかが、引き続き今後の課題であるように思えます。
米Wildcard Incubatorは、この、「創業期~MVP完成/初期マーケティング/プレ・シリーズA」フェーズのスタートアップや起業家で米国での本格展開を目指すクライアントを米国と日本とで地道に泥臭く後方支援していくことで、貴重な役割を果たすことをこれからも目指します。