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WeWorkの上場延期で注視したい大型IPO候補の行方は❓

10/7/2019

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(写真出所:上:https://insidetrade.co/airbnb-direct-listing/   下:  https://table.skift.com/2019/02/07/postmates-files-for-ipo/)

先般、アメリカのユニコーンベンチャーの代表格であるThe We Companyが米国Nasdaqへの上場申請を撤回したニュースは全世界で派手に知れ渡りましたね。このThe We Companyとは、もちろん、スタートアップのCo-Working Spaceとして日本上陸も果たし、ソフトバンクからも大型投資を受けたWeWorkですね。この件については、既に多くの有識者が興味深い見解を発表されていますし、中には今回の延期発表前に既に警笛を鳴らしていた方々もいらっしゃいましたね。当方も証券業界でIPO主幹事実務経験を含む10年間、その後VC業界で3年間の日米ベンチャー投資を経験させて頂きましたが、「相変わらず人間は全く同じ罠にはまる動物なのだ」という印象を強く抱いた次第です。それは、以下の通り:

  1. 時価総額の根拠となる合理的な説明が出来ない会社はIPOは✖(サービスは例え素晴らしくても…) 
  2. 申請会社の組織構造がやたら複雑な会社は「何かある」
  3. 創業者が「勘違い」している会社は「即アウト!」(✯⇒これ、日本のIPOにも昔からありますね)

1については、WeWorkの場合、直前の投資価値がUS$47billionであったわけですから、それを上回る株価・時価総額で上場しない限りは既存株主は了承しませんが、もしもIPOをしていたならば、実にUS$50billion程度となる予定であったそすれば、その根拠は見当たらりません。Space-as-a-Serviceという聞きなれない表現を突き付けていますが、先の「Risk Factors」をさっと流し読みをしても、大半のリスク要因は「不動産相場」の範疇と思われる項目しか見当たりません。つまり、WeWork≒不動産関連銘柄という構図になるとしか思えないということになりますね。

また、2については、S1の前半のカラー口絵の箇所(「Corporate Information」16頁目)には、同社の組織構造が掲載されていますが、ここで、「The We Company was incorporated under the laws of the state of Delaware in April 2019 as a direct wholly-owned subsidiary of WeWork Companies Inc...~」と記載されているところが気になります。つまり、上場申請する事業年度である2019年4月に新たに設立されたばかりというところが、何か腑に落ちない印象を与えれてしまいます。上場申請事業年度に新しい組織再編がされているのであれば、継続性の観点でどこか直観的に引っかかるのが筆者の考え方です。必ずしもこうした点が何らかの事象が隠されているとは限りませんが、何か「感づく」習慣をつけておくのも良いと思います。

因みに、IPOを見る際、異論はあるのかもしれませんが、目論見書で必ず目を通すべき箇所は次の2カ所です: 一つは財務指標(当たり前ですが)、それから同じくらい重要なRisk Factors(日本でいう「事業等のリスク」に該当)です。時代の変遷に伴い、多少の変化はあるのかもしれませんが、IPOの主幹事業務で会社の経営者や管理部門の皆様と最も時間と労力を割くのは、この目論見書の重要記載項目である「事業等のリスク・Risk Factors」です。WeWorkの上場申請時のS1では24頁目から52頁目がそれに該当しますが、ここを読むと、同社が「単なる古き良き不動産関連企業ではなく、未来志向のテクノロジーありきのNext Big Thing」的な主張やメディアの持て囃され方からは乖離を感じてしまいます。なぜなら、本来、不動産でない「何らかの要素」がこの会社の株価・事業価値を決めるのであれば、その「何らかの要素」が脅かされる結果、自分達の事業の土台が揺らぐとの開示をこの「事業等のリスク」で少なくともある程度は反映・記載されていてもおかしくないはずだからです。しかし、そうした項目はほとんどないですよね。つまり、考え方として、「うちはITよりも不動産及びその周辺市況に業績が大きく左右される会社」だということを伝えてくれているわけです。

3点目の「勘違い創業者」については、もうわざわざ書くまでもございません(例:会社のお金を勝手に使い込む/“個人的”な人間関係を中枢メンバーに入れたがる/多々)。

※ご参考: WeWork(正式な登記名:The We Company)のS1目論見書

では、これから上場が囁かれる会社群の中で恐らく注目に値するのは、残るはやはりAirBnBですね(Uber、Lyft、Slackは上場済み・・・但し、2019年のIPOクラスは尽くUnderperformしていますね(笑))。時価総額は、直前の投資ラウンドで既にUS$31 billionです。それから、もう1社は、AirBnBや先のWeWork、既に上場を果たしたUberと比べると小粒になりますが、今我々が力を注ぐ分野(Food/NOSH/Bio)の一つであるFood Deliveryで業界トップ級でいわばユニコーン的なポジションと見られるPostmatesです。但し、時価総額はUS$1.5 billion程度です。

まず、AirBnBについてですが、公に報道されている事業規模では、既に売上高がUS$1 billionを超えており、EBITDAベースでも黒字化しているようで、それに対して時価総額が直近でUS$31 billion。想定競合他社であるExpediaがUS$18 billion、ホテルチェーンのHiltonがUS$25 billion、Booking.comのBooking HoldingsがUS$80 billion(**)という水準を鑑みれば、WeWorkのような「破格な盲目的博打」ではなさそうですが、一方で彼らにはリーガルリスクが付きまとっている点がディスカウント要因ですね。例えば、日本国内では民泊が禁止をされている物件での民泊をされていたり(※筆者が実際に2,3年前、主催をするミニカンファレンスの為に福岡へ滞在中に遭遇しました。日本で初めてAirBnBを利用した際、初日のエレベーター内で見事に「当物件は民泊を禁止しております」との張り紙が。笑)、米国内でもニューヨーク市が同市内のアパートでのいわゆる「短期の賃貸」を基本的に禁じているとのことで、同社の登録者のデータの開示を求めている模様(***)。これが決着つくまでは上場は見送られるものと思われます。無論、既存投資家(=VC)にとっては上場後のパフォーマンスなんぞはどうでも良い他人事となりますが、まっとうな主幹事証券会社であれば、IPO後のパフォーマンスは気にするはずですので、昨今のWeWorkの件を鑑みて、慎重に出てくると考えています。ただ、AirBnBの場合は、SpotifyやSlack同様、既に自前で資金が賄われていて差し当たって資金調達の為に上場をする必要性に迫られていないとの見方も強く、証券会社を通さない+新株発行による資金調達を伴わないいわゆる「Direct Listing」方式を採用するのではとの憶測も流れていますが、結構アグレッシブな経営戦略を突き進む印象が強い会社ですから、上場を機にまた大掛かりな新戦略を打ち出してそこにさらなるバリュエーションを高めて来そうな気配がします。従って、Direct Offeringではなく、通常の方式でのIPOになると思います。

一方、Postmatesは、WeWorkやUberと比べると小粒になりますが、彼らはUber Eatsと競う会社であり、DoorDashやGrubHubとフードデリバリー系で競うTier 1としては注目に値します。特に彼らはUber Eatsが競合にあたる為、Uber Eatsとどう対抗してどのように事業の将来の持続的な成長性のストーリーを描けるのかが焦点となりますね。因みにUber Eatsは、Uberの第二四半期決算書によれば、2019年上半期で売上高がUS$1.1 billionで前年比80%成長ですから、年間でUS$2.2 billionは到達する計算となります(*)。Uber Eats以外の主たる競合ではDoorDashがUS$600 millionを集めており、時価総額がUS$12.6Billionと大きく、2014年に上場したGrubHubは売上高US$1 billion、時価総額がUS$6 billion前後で推移。それに対して、Postmatesは売上高がUS$1 billion、時価総額がUS$2.4 billion。もう10月ですから、AirBnBと併せて、本件も恐らく来春にIPOをするのではないかと思いますが、Beyond Meatのように実際の食を創る会社が上場時から10倍近い時価総額に成長している一方でフードデリバリーやミールキットといったサービス系は尽く上場後の失速が著しいので、PostmatesのPost-IPOのパフォーマンスには期待をしたいところ。ただ、Uber Eatsの存在がPostmatesの成長ストーリーに壁となって立ちはだかりそうな点と、同社のシェアが業界トップではなく(つまりユニコーンではなく)10%前半で推移している点、類似企業として既に上場して久しいGrubHubの時価総額がさほど大きく飛躍していない点を鑑みれば、結局は既存投資家が同業への売却をした方がIPO市場で叩かれるよりも高値がつく可能性もあると判断される可能性も十分ありそうな気がします。

要は、Public Entityの仲間入りをするIPOとしての「成功例」とは、上場後の3~5年の株価形成がどうなるかであって、初日にストップ高買い気配で終わるとか、上場時の時価総額はデカいからとか、ではないのです。

さて、結果がどうなるか、これからも注視して行きたいと思います。

(*)出所:https://investor.uber.com/news-events/news/press-release-details/2019/Uber-Reports-Second-Quarter-2019-Results/default.aspx (**)https://www.vox.com/2019/3/19/18272274/airbnb-valuation-common-stock-hoteltonight (***) https://www.bloomberg.com/news/articles/2019-09-19/airbnb-ipo-why-new-york-city-is-making-investors-nervous
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