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✯ポスト・コロナ時代、ますます「肝」となりそうな "ESG経営の実行" の重要性

9/22/2020

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 ポスト・コロナ以前から既に上場株式投資の世界では広く知れ渡るのが、ESG投資ですね。ESGとは周知の通り、英語の「環境(Environment)」、「(地球)持続性(Sustainability)」、「企業統治/ガバナンス(Governance)」のそれぞれ頭文字をとったものですが、SDGs(Sustainable Development Goals=続可能な開発目標)と並び、特にプロ投資家・機関投資家の一つの投資ガイドラインとして昨今その重要性が増してきているようです(ESG投資は投資家側の取り組み VS. SDGsは企業側の取り組み、との表裏の関係と解釈されますね)。これは、スタートアップにとっては新しく取り組み始められるテーマと捉えられますが、一方で、旧来の世界で適応していたもののこれからの新たな時代に順応する必要のある大手企業等では、イノベーション(オープン/クローズド)を今後成功裏に果たす上で真正面から向き合っていく必要があるテーマかもしれません。日頃からお付き合いを頂く大手~中堅の事業会社様との会話を通じてもここ最近では自然とこのESG・SDGsが頻繁に話題として出現することが多いです(恐らく時代の必然でしょうね)。そこで、このESGについて、平べったく簡単に触れたいと思います。
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 上記は、とあるアジアの主要国の株式市場の騰落率に関する米Morningstar社によるデータの抜粋です。今年に入り、コロナが発生してから、一時の暴落から一旦は立て直したように見える世界の主要株式市場の株価ですが、前例のないこの混迷期であるが故、今後10年~の予測がしにくい状況下、決して余談を許さない投資環境がまだまだ続く気配を感じます。そんな中、上記のように、いわゆるESGへの取り組みに積極的な上場企業への投資を積極的に手掛ける投資ファンドと全般的なファンドとを比べてその下落率がだいぶ踏み止まっているのが数字ではっきりと表れていますね。

 日本でも、SDGsやESGといったバズワードが他業態に渡る企業経営課題並びに投資テーマとして広く知れ渡り始めている者かと思います。ESG投資残高は欧米中心に30兆ドルを超えており、日本においても2014年まではゼロに等しかったものが2015年の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)による国連責任投資原則(PRI)への署名(後述)をきっかけとして(と思われます)、2018年には2.2兆ドルにまで急速に伸びている模様です(※GSIAデータ)。

 そこで改めて、ESGの定義について、再確認したいと思います。以下は、米Morningstar社による記述を引用しています:

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出典:米Morningstar社:https://www.morningstar.com/articles/962827/interested-in-sustainable-investing-heres-what-you-need-to-know-about-sustainable-funds 

 経産省によれば、ESG投資は、一般的な株式投資の重要指標である企業財務のデータのみならず、昨今我々の生きる大切な地球及びそこで生活をする我々人間と全ての生命に直結する環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)という主に3つの要素を投資の可否判断基準に諸込んだ投資のことを指します。特に、年金基金など大きな資産を超長期で運用する機関投資家を中心に、企業経営の持続性(=サステナビリティ)を評価するという概念が次第に普及し、気候変動などを念頭においた長期的なリスクマネジメントや、企業の新たな収益創出の機会(オポチュニティ)を評価するベンチマークとして、国連持続可能な開発目標(SDGs)と合わせて注目されています。

 では、具体的にESG投資を受けるとどんなことが企業は意識+実行をしないといけないのか?株式市場で投資を行うプロの機関投資家等の投資ファンド(Ex.年金基金、政府系ファンド、ヘッジファンド等)が投資先企業に対し、直接の対話や議決権行使などを通じて経営に対して直接的にガバナンスを働きかけるように動きます。(***)。それに応じて企業側は適切なIR対応を遂行する重要性が一段と増すこととなります。最近5年間に起きたESG投資に係る投資業界の主なマイルストーンをまとめると、以下、の通りです(東洋経済の記事を引用):

  • 昨今のESG投資が急拡大したきっかけとされるのが、2015年9月の国連サミットにおけるSDGs(持続可能な開発目標)の採択と、同年12月のCOP21(第21回気候変動枠組条約締結国会議)におけるパリ協定の採択と解釈される。
  • 2015年、日本国内においても欧米市場に準ずる流れで上場企業が守るべき企業統治の指針である「コーポレートガバナンスコード」が適用開始され(2021年改訂予定)、適切な情報開示や株主との対話などが基本原則に盛り込まれる。2018年の改訂でESGに関する情報開示の必要性も追加される。
  • 機関投資家の行動指針を定めた日本版のスチュワードシップコードが2014年に策定され、受託者責任の方針公表や投資先企業の経営モニタリングなどが原則化される(2019年の再改訂によりESG要素を投資プロセスに組み込むことが新たに明記)。
  • 東証は今年の3月に「ESG情報開示実践ハンドブック」を作成。
  • 上記の流れに基づき、上場企業は、株主となる機関投資家等に対する説明責任や情報開示の改善等がさらにいっそう求められるようになる。

 まぁざっくりとした主たる大まかな流れは上記の通り。

 さて、上記の米Morningstar社の区分の通り、環境(Environment)、地球持続性(Sustainability)、ガバナンス(Governance)それぞれに具体的なテーマがありますが、特にEとSに関しては、スタートアップ投資の世界でもこれからいわゆる「ポスト・コロナ・テーマ」としてもますます注目されていく領域をカバーするものが多く目に留まりますね。例えば:

  • Carbon Emission: (二酸化)炭素排出量のコントロール 
  ※主なスタートアップ事例:代替エネルギー、アグリテック、コンテック、等
  • Energy Efficiency: エネルギ―効率化
  ※主なスタートアップ事例:代替エネルギー、自動車、モビリティ/自動運転、等
  • Waste Management: 廃棄物管理
   ※主なスタートアップ事例:フードバイオ、マテリアルサイエンス、モビリティ/自動運転、等
  • Diversity & Workplace Policies: 多様性/職場環境改善
   ※主なスタートアップ事例:HRテクノロジー、ウェルネス/ウェルビーイング<Well-Tech>、次世代   デジタルヘルス、ロボティクス、スマートシティ<=Society 5.0>等
  • Supply Chain Management: サプライチェーンマネジメント
   ※主なスタートアップ事例:フードテック~アグリテック(例:配達中の食材品質管理)
  • Community Impact: ≒企業が属する社会へのより直接的な貢献<一時バズりかかったようで最近聞かなくなりがちな「Collective Impact(**)」も含有するものと解釈> 
   ※主なスタートアップ事例:シビック・テック、教育テック、等(これはむしろ大手企業の役割❓❕ 都   市化の副作用である貧困格差の是正を自身のテクノロジーを活かして取り組み始める某シリコンバレー   大手IT企業、等)

 - と言ったように、既にVC投資の注目セクターです。上記の各々の分野に関してはDX(デジタルトランスフォーメーション)もありますね。こうした多岐に渡る分野・領域において、スタートアップ等を中心にESGやSDGsを当初から念頭においた、これからの時代を先んじた多くの取り組みが次第に具現化されていくものと思われますが、当該テーマは、これから世の中にデビューするスタートアップよりもむしろ上場大手企業にとって、従来の社会秩序からの脱却を市場が強く要求し始める中での大きな経営課題となりそうな気がします。その為の手段として、社内リソースを最大限生かすクローズド・イノベーションか、外部のスタートアップ等を最大限に有効活用するオープンイノベーションか、あるいはCVCという間接的な手法をとるのか、企業側においてもこれからその手法に関する試行錯誤がもうしばらくは続きそうな雰囲気ですね。

備考:(**)Collective Impact<定義>:
  • 様々なプレイヤーが共同して社会課題解決に取り組むための一つのスキームであり、共同の効果を最大化するための枠組みのことを指す。ある特定の社会課題の解決に取り組むプレイヤーは自治体、企業、NPO、政府、財団など様々な分野で多数存在する。そのようなプレイヤーが社会課題解決に個別に取り組むのではなく、Collective(集合的)にインパクトを起こすことを重視し、その実現のための具体的なアプローチを指すこともある。あるいは、異なるセクターにおける様々な主体(⾏政、企業、NPO、財団など)が、共通のゴールを掲げ、お互いの強みを出し合いながら社会課題の解決を⽬指すアプローチ。Isolated Impact(孤立したインパクト)と対を成す概念。

 以下は、米大手金融機関のJPモルガン社が全世界の主要大手機関投資家に対して実施をしたサーベイの結果を表しています。「今般のCOVID-19が今後中長期的なESG投資にプラスの影響はあるか?!」との問いに対する回答結果ですが、「そこそこポジティブ」以上を合算すると55%となっており、概ね今回の未曾有のCOVID-19が、今後ESG投資を促進させる動機となったと見られているようです。

参考:https://ideasforgood.jp/glossary/collective-impact/・PubliCo 2016年資料「コレクティブ・インパクト」 (***)https://toyokeizai.net/articles/-/361390 
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出典:米J.P. Morgan社, Results from the survey “Tracking the ESG implications of the COVID-19 Crisis” 、「Why COVID-19 Could Prove to Be a Major Turning Point for ESG Investing」より。
参考:https://www.morningstar.com/articles/988114/sustainable-funds-weather-downturns-better-than-peers 

 実際の最近2,3年の資金流入額を見ると、直近10年間と比較すると既にはっきりとその上昇傾向がくっきりと出始めているようですね。以下は、米Morningstar社によるデータですが、北米市場において、ESG関連のファンドへの新規資金流入の推移について表したデータですが、2019年には前年度までと比べてほぼ3倍以上増加、さらに今年にはいってからはそれ以上の加速度で伸びている様子が明白です。凄まじい伸び方ですね。。
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出所:米Morningstar社:https://www.cnbc.com/2020/07/01/coronavirus-major-turning-point-for-responsible-esg-investing-says-jpmorgan.html

 最後に、我々日本が所属するアジアにおいてもESG投資は徐々に浸透しつつあるようで、日本においては、2015年に年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)による国連責任投資原則(PRI)への署名が一つの大きなきっかけとなった模様です。昨今のコロナを経て、「ポスト・コロナ」がベンチャー投資のみならず、株式市場投資においても主たるテーマとなるであろうと推測される中、日本の大手企業に置かれては、HR業界であれば「従業員の職場環境」、食品等業界であれば「食と地球持続性」、自動運転やモビリティであれば「地球環境問題~社会インフラ」、等など、それぞれの「社会的責任」「地球持続性」といった課題にどう具現化された取り組みを明示していけるのかが、上記の通り、10年、20年持続的な経営を担う上で、今後着実に投資家(プロ・個人問わず)からの厳しいモニタリングが今まで以上に行われていく可能性がありそうです。これから新しいチャレンジに打って出るスタートアップにとってはチャンスであり、大手企業にとってはイノベーションのチャンスとして捉えることで、良い結果が導き出されて行くと信じています。
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注目する北米フードテック:ガム×脳科学❔❕

9/6/2020

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写真提供:「Neuro Gum: Does Nootropic Chewing Gum Truly Work?」https://shepherdgazette.com/wp-content/uploads/2020/08/image_treatment_nero-gum_200731-720x720.jpg  

 脳科学領域に注目したさまざまな取り組みがここ1,2年、スタートアップ投資において注目され始めた領域の一つです。直近では、イーロン・マスクによる埋め込み型の脳と機械のインターフェースを開発する新たな脳科学系(“Neuroscience”)企業であるNeuroLink社が豚の脳を使用した開発の進捗状況が報道されて注目されていますが、当該研究領域は人間にとっても解明すべきものが深くまだまだ課題が多いも世用であり、すぐに実用化とマネタイズ化が進む段階にはない状況のようです。  

 脳神経学領域への主たるスタートアップ投資の直近12年の概況を見ると、以下の通り、2015年以降伸び始めており、2018年には$1.5BNにまで伸びています。主な事例では、Dreem社による2018年6月実施の総額$35MものシリーズC等が挙げられますが、こうした事例を除くと、全体的にはまだ研究開発段階として総じて初期段階のものが多いような印象を受けます。最近俄かに日本国内においても注目をされはじめたトランステック領域を含めて、まだまだ黎明期の段階を経ているようですが、ポスト・コロナの混沌とした世の中を生きていく我々にとって、マインドフルネス領域の一環として当該領域はさまざまアイディアが当面出続けていくと予想されますので、2020年後半から2021年を通じて、自ずと主たるテーマ領域として動きが活発化していくものと予想されますね。主な動機や背景として言われているのは主に以下のような着眼点から来るものかと思われます:

  1. 新型コロナウイルスの感染拡大に伴うソーシャル・ディスタンスの日常化と共に、人とのコミュニケーション不足による孤独感やストレス状態の拡大の可能性への課題認識
  2. 上述の社会的な孤立と心疾患や発作等のリスク上昇との相関関係に関する課題解決の訴求性の上昇
  3. 遠隔仕事の日常化に伴う職場環境のストレスへの対処

1.については人と人とのリアルな繋がりを促進するテクノロジー(共通趣味等に基づいた新しいオンラインコミュニティプラットフォーム)、2.は遠隔医療をはじめとする各種デジタルヘルスの新たな仕組み作り(例:ウェラブルデバイス、オンライン・セラピー)、そして3.については既に頻繁に触れている領域ですが、HRテクノロジーがこれから活発な取り組みが進みそうです(既に3,4年事例が多い個別領域については今後選別色が強まる過渡期に突入)。

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出所:米Statisita https://www.statista.com/statistics/596310/venture-investments-neurology-companies-us/ 

 前述のDreem社の概要は以下の通り:

  • 社名:Dreem
  • 設立:2014年7月(創業:フランス/現・本社サンフランシスコ市)
  • 概要:睡眠の質を高めることを目的とする睡眠促進デバイスの研究開発。収集した脳データを活用してリアルタイムでユーザーの睡眠段階を把握し、利用者の睡眠を促進・支援・強化をすることを目指す「スマートスリープヘッドバンド」
  • ステージ:シリーズC
  • 投資総額:$57M
  • 主要投資家:Johnson & Johnson、他

 Dreemは、マシーンラーニング技術、EEG(Electroencephalogram=脳波)測定電極、加速度センサー、パルス・オキシメータ(酸素飽和度測定)等の技術を駆使しており、それらをうまく活用することで、利用者の睡眠の深さやその時々の身体の睡眠状態を計算し、データ化をすることでその機能を実現させる模様。

 私見では脳波の世界は非常にデリケートな領域に思えますから、テクノロジーと実際の我々人間の人体の反応との絶対的な相関関係がどれほど確かなものなのかを十分に証明されるにはもうしばらくは時間を要する気がしますが、Johnson & Johnsonのような大手バイオ・ヘルスケア企業が事業投資に踏み切るこの事例のようなケースが増えていくことでどのように加速化、実用化されていくのか、興味深いところです。最近不眠症気味の筆者にとっても、是非一度試してみたい気持ちにさせられます・・・

※詳しくはこちらをご参考に。
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出所:Dreem社ホームページ・https://medium.com/@gabriel_31154/product-management-on-the-dreem-headband-e8e2e107144

 こうした中、興味深いベンチャー企業(但し、まだ謎めいた印象であり、その信憑性に関しては全く未知数…)が、Neuro社です。以下が同社の直近のウェブサイト。今年の初めに大幅に刷新した様子です(自社サイトでの販売機能を強化+ブランドイメージの刷新等)。

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出典:同社ウェブサイト  

  同社は【ガムと脳科学】を組み合わせたいわば稀有な存在と言えそうです。言い換えれば、「機能性ガム」の開発製造販売を手掛けるスタートアップ。発端は日系米国人であるケント・ヨシムラ氏と彼の学生時代からの友人であるライアン・チェン氏が二人でロサンゼルスで創業をしたスタートアップです。ただし創業時期は2015年10月ですから2020年9月時点でほぼ5年は経過していますのでそこそこ社歴はあるようすが、投資フェーズ的には公表資料ベースではまだPre-Seed段階(ここまで少額の資金で良くここまで漕ぎ着けることが出来たのが驚きですが、恐らく、未公表ベースでもっと資金は積んでいるものかと推察します):

社名:NeuroGum, Inc.
設立:2015年10月(本社ロサンゼルス市)
事業/製品概要:機能性ガムの開発及び販売<自社Eサイト、食品チェーン店舗等>
特徴:
同社のガムには次の素材が含まれる:天然緑茶カフェイン、L-テアニン、B6、およびB12ビタミン。同社の主張によれば、これらの素材が「消費者にエネルギーを与え、精神を落ち着かせ、頭のキレを改善する」効果をもたらすとのこと(※2020年8月末現在、当該主張が科学的な研究結果に基づくとの実証データは確認出来ず)。さらに、完全ヴィーガン、グルテンフリー、アスパルテーム等の人工甘味料不使用、精製糖不使用(Sugar Free)
ステージ:Pre-Seed
投資総額:$22K
特記事項:
  • 設立当初、米クラウドファンディングサイトのIndiegogoを介してたった3日で500人の個人投資家を成功裏に集める。
  • 現在、全米約6,500店舗に流通。
  • 全米のクロスフィット・フィットネスプログラムのコミュニティ向けにサンプル配布から、当該インフルエンサーを活かした精力的なマーケティングを実施中
  • 特にCOVID-19以降はクロスフィットプログラムの中に当該製品をプログラムに組み込む新しい試みを展開中

 どちらかといえば、健康食品、機能性食品の範疇ではなく、Red Bullのような、エネルギーブースター的な、「 Nootropic系(カフェイン系/向知性)」のカテゴリーに属するもので、健康志向的というより、スポーツドリンク/エネルギー系ドリンクのセクターに属するイメージ。スポーツドリンク系のここ2年程度の動きといえば、かつての一人勝ち状態にあったGatoradeの牙城を崩しにかかったBodyarmour社の大躍進が記憶に新しいですね。2017年以降、当該「Alternative Drink(もしくはBeyond Waterと括られる)」領域は、代替プロテイン分野とは別に、比較的手堅く市場が伸びていると見られる領域。ある意味、Soylent社やHuel社をはじめとする「完全栄養食ドリンク」のセグメントと重複する部分もありそうです。同社は、今年1月末に不慮の事故でこの世を去ってしまった元NBAのスタープレーヤーのKobe Bryantさんが投資をしていたスタートアップとしても有名です。

 こうしたNeuroのような、「脳科学」的な効果効能(に近いと思われるマーケティング手法)をうたうフードスタートアップで科学的な実証性に乏しいと思われるものは多いと思います。代替プロテインのような研究開発途上の先端領域は「走りながら」人間の健康面に及ぼす効果等に関してデータを集め、互いがデファクトを競うような流れがあるものと思いますが、脳神経学分野はまだまだ科学では解明しきれない要素が恐らく非常にまだ大きい印象がありますので、こうしたNeuroのガムのように「消費者の思考+嗜好に埋め込む」新商品が果たしてどこまでB2C市場で受け入れられていくのか、そして市場が伸びていくのか、正直読みづらい所である気がします。その意味で、VC的にはスタートアップ投資を行う上で慎重になりがちな分野ではある気がします。

 ここで一つ参考にしたいのが、日本人にはお馴染みの昔ながらの昆布茶。欧米では「コンブチャ<Kombucha>」であり、以下のグラフの通り、北米では一定層のコンブチャ愛好コミュニティは確率しつつ、今後も着実に伸びていくと予想されています。ただ、欧米で販売されるコンブチャについては、実際に米国人関係者と会話をすると、その健康効果がどこまで信憑性があるのかは幾分「アバウトな」部分も未だに少なくはないと思われます。というか、実際に購入する層の声を聞いてみると、一部のストイックなグループは別として、ある程度「健康そうなイメージ」だけで割と市場が伸びているのではないかと思わされる傾向がありますね。

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出典: 米Grand View Research, Inc.:https://www.grandviewresearch.com/industry-analysis/kombucha-market 
 
 とはいえ、そんなコンブチャ市場も一定の科学的な実証研究は米国でも着実に進んでいるようであり(*)、こうした先例を踏まえてNeuroのガムも今後は彼らが主張をするような効果効能についてある一定の実証データが集まれば、コンブチャのように大衆市場の一部を獲得するくらいまでに果たして伸びるのか、このところ堅実に伸びているNeuroscience領域の動向の一つとして、そして、フードテックの範疇でもふと興味深く見守りたいスタートアップです。

備考(*):
「
Kombucha: a systematic review of the empirical evidence of human health benefit」 https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1047279718307385


参考:

自然科学研究機構生理学研究所: https://www.nips.ac.jp/sp/release/2008/12/post_13.html 
自然科学研究機構・生理学研究所・柿木隆介名誉教授: https://kamukoto.jp/brain/854 

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