ポスト・コロナ以前から既に上場株式投資の世界では広く知れ渡るのが、ESG投資ですね。ESGとは周知の通り、英語の「環境(Environment)」、「(地球)持続性(Sustainability)」、「企業統治/ガバナンス(Governance)」のそれぞれ頭文字をとったものですが、SDGs(Sustainable Development Goals=続可能な開発目標)と並び、特にプロ投資家・機関投資家の一つの投資ガイドラインとして昨今その重要性が増してきているようです(ESG投資は投資家側の取り組み VS. SDGsは企業側の取り組み、との表裏の関係と解釈されますね)。これは、スタートアップにとっては新しく取り組み始められるテーマと捉えられますが、一方で、旧来の世界で適応していたもののこれからの新たな時代に順応する必要のある大手企業等では、イノベーション(オープン/クローズド)を今後成功裏に果たす上で真正面から向き合っていく必要があるテーマかもしれません。日頃からお付き合いを頂く大手~中堅の事業会社様との会話を通じてもここ最近では自然とこのESG・SDGsが頻繁に話題として出現することが多いです(恐らく時代の必然でしょうね)。そこで、このESGについて、平べったく簡単に触れたいと思います。
上記は、とあるアジアの主要国の株式市場の騰落率に関する米Morningstar社によるデータの抜粋です。今年に入り、コロナが発生してから、一時の暴落から一旦は立て直したように見える世界の主要株式市場の株価ですが、前例のないこの混迷期であるが故、今後10年~の予測がしにくい状況下、決して余談を許さない投資環境がまだまだ続く気配を感じます。そんな中、上記のように、いわゆるESGへの取り組みに積極的な上場企業への投資を積極的に手掛ける投資ファンドと全般的なファンドとを比べてその下落率がだいぶ踏み止まっているのが数字ではっきりと表れていますね。
日本でも、SDGsやESGといったバズワードが他業態に渡る企業経営課題並びに投資テーマとして広く知れ渡り始めている者かと思います。ESG投資残高は欧米中心に30兆ドルを超えており、日本においても2014年まではゼロに等しかったものが2015年の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)による国連責任投資原則(PRI)への署名(後述)をきっかけとして(と思われます)、2018年には2.2兆ドルにまで急速に伸びている模様です(※GSIAデータ)。
そこで改めて、ESGの定義について、再確認したいと思います。以下は、米Morningstar社による記述を引用しています:
日本でも、SDGsやESGといったバズワードが他業態に渡る企業経営課題並びに投資テーマとして広く知れ渡り始めている者かと思います。ESG投資残高は欧米中心に30兆ドルを超えており、日本においても2014年まではゼロに等しかったものが2015年の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)による国連責任投資原則(PRI)への署名(後述)をきっかけとして(と思われます)、2018年には2.2兆ドルにまで急速に伸びている模様です(※GSIAデータ)。
そこで改めて、ESGの定義について、再確認したいと思います。以下は、米Morningstar社による記述を引用しています:
出典:米Morningstar社:https://www.morningstar.com/articles/962827/interested-in-sustainable-investing-heres-what-you-need-to-know-about-sustainable-funds
経産省によれば、ESG投資は、一般的な株式投資の重要指標である企業財務のデータのみならず、昨今我々の生きる大切な地球及びそこで生活をする我々人間と全ての生命に直結する環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)という主に3つの要素を投資の可否判断基準に諸込んだ投資のことを指します。特に、年金基金など大きな資産を超長期で運用する機関投資家を中心に、企業経営の持続性(=サステナビリティ)を評価するという概念が次第に普及し、気候変動などを念頭においた長期的なリスクマネジメントや、企業の新たな収益創出の機会(オポチュニティ)を評価するベンチマークとして、国連持続可能な開発目標(SDGs)と合わせて注目されています。
では、具体的にESG投資を受けるとどんなことが企業は意識+実行をしないといけないのか?株式市場で投資を行うプロの機関投資家等の投資ファンド(Ex.年金基金、政府系ファンド、ヘッジファンド等)が投資先企業に対し、直接の対話や議決権行使などを通じて経営に対して直接的にガバナンスを働きかけるように動きます。(***)。それに応じて企業側は適切なIR対応を遂行する重要性が一段と増すこととなります。最近5年間に起きたESG投資に係る投資業界の主なマイルストーンをまとめると、以下、の通りです(東洋経済の記事を引用):
まぁざっくりとした主たる大まかな流れは上記の通り。
さて、上記の米Morningstar社の区分の通り、環境(Environment)、地球持続性(Sustainability)、ガバナンス(Governance)それぞれに具体的なテーマがありますが、特にEとSに関しては、スタートアップ投資の世界でもこれからいわゆる「ポスト・コロナ・テーマ」としてもますます注目されていく領域をカバーするものが多く目に留まりますね。例えば:
- と言ったように、既にVC投資の注目セクターです。上記の各々の分野に関してはDX(デジタルトランスフォーメーション)もありますね。こうした多岐に渡る分野・領域において、スタートアップ等を中心にESGやSDGsを当初から念頭においた、これからの時代を先んじた多くの取り組みが次第に具現化されていくものと思われますが、当該テーマは、これから世の中にデビューするスタートアップよりもむしろ上場大手企業にとって、従来の社会秩序からの脱却を市場が強く要求し始める中での大きな経営課題となりそうな気がします。その為の手段として、社内リソースを最大限生かすクローズド・イノベーションか、外部のスタートアップ等を最大限に有効活用するオープンイノベーションか、あるいはCVCという間接的な手法をとるのか、企業側においてもこれからその手法に関する試行錯誤がもうしばらくは続きそうな雰囲気ですね。
備考:(**)Collective Impact<定義>:
以下は、米大手金融機関のJPモルガン社が全世界の主要大手機関投資家に対して実施をしたサーベイの結果を表しています。「今般のCOVID-19が今後中長期的なESG投資にプラスの影響はあるか?!」との問いに対する回答結果ですが、「そこそこポジティブ」以上を合算すると55%となっており、概ね今回の未曾有のCOVID-19が、今後ESG投資を促進させる動機となったと見られているようです。
参考:https://ideasforgood.jp/glossary/collective-impact/・PubliCo 2016年資料「コレクティブ・インパクト」 (***)https://toyokeizai.net/articles/-/361390
経産省によれば、ESG投資は、一般的な株式投資の重要指標である企業財務のデータのみならず、昨今我々の生きる大切な地球及びそこで生活をする我々人間と全ての生命に直結する環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)という主に3つの要素を投資の可否判断基準に諸込んだ投資のことを指します。特に、年金基金など大きな資産を超長期で運用する機関投資家を中心に、企業経営の持続性(=サステナビリティ)を評価するという概念が次第に普及し、気候変動などを念頭においた長期的なリスクマネジメントや、企業の新たな収益創出の機会(オポチュニティ)を評価するベンチマークとして、国連持続可能な開発目標(SDGs)と合わせて注目されています。
では、具体的にESG投資を受けるとどんなことが企業は意識+実行をしないといけないのか?株式市場で投資を行うプロの機関投資家等の投資ファンド(Ex.年金基金、政府系ファンド、ヘッジファンド等)が投資先企業に対し、直接の対話や議決権行使などを通じて経営に対して直接的にガバナンスを働きかけるように動きます。(***)。それに応じて企業側は適切なIR対応を遂行する重要性が一段と増すこととなります。最近5年間に起きたESG投資に係る投資業界の主なマイルストーンをまとめると、以下、の通りです(東洋経済の記事を引用):
- 昨今のESG投資が急拡大したきっかけとされるのが、2015年9月の国連サミットにおけるSDGs(持続可能な開発目標)の採択と、同年12月のCOP21(第21回気候変動枠組条約締結国会議)におけるパリ協定の採択と解釈される。
- 2015年、日本国内においても欧米市場に準ずる流れで上場企業が守るべき企業統治の指針である「コーポレートガバナンスコード」が適用開始され(2021年改訂予定)、適切な情報開示や株主との対話などが基本原則に盛り込まれる。2018年の改訂でESGに関する情報開示の必要性も追加される。
- 機関投資家の行動指針を定めた日本版のスチュワードシップコードが2014年に策定され、受託者責任の方針公表や投資先企業の経営モニタリングなどが原則化される(2019年の再改訂によりESG要素を投資プロセスに組み込むことが新たに明記)。
- 東証は今年の3月に「ESG情報開示実践ハンドブック」を作成。
- 上記の流れに基づき、上場企業は、株主となる機関投資家等に対する説明責任や情報開示の改善等がさらにいっそう求められるようになる。
まぁざっくりとした主たる大まかな流れは上記の通り。
さて、上記の米Morningstar社の区分の通り、環境(Environment)、地球持続性(Sustainability)、ガバナンス(Governance)それぞれに具体的なテーマがありますが、特にEとSに関しては、スタートアップ投資の世界でもこれからいわゆる「ポスト・コロナ・テーマ」としてもますます注目されていく領域をカバーするものが多く目に留まりますね。例えば:
- Carbon Emission: (二酸化)炭素排出量のコントロール
- Energy Efficiency: エネルギ―効率化
- Waste Management: 廃棄物管理
- Diversity & Workplace Policies: 多様性/職場環境改善
- Supply Chain Management: サプライチェーンマネジメント
- Community Impact: ≒企業が属する社会へのより直接的な貢献<一時バズりかかったようで最近聞かなくなりがちな「Collective Impact(**)」も含有するものと解釈>
- と言ったように、既にVC投資の注目セクターです。上記の各々の分野に関してはDX(デジタルトランスフォーメーション)もありますね。こうした多岐に渡る分野・領域において、スタートアップ等を中心にESGやSDGsを当初から念頭においた、これからの時代を先んじた多くの取り組みが次第に具現化されていくものと思われますが、当該テーマは、これから世の中にデビューするスタートアップよりもむしろ上場大手企業にとって、従来の社会秩序からの脱却を市場が強く要求し始める中での大きな経営課題となりそうな気がします。その為の手段として、社内リソースを最大限生かすクローズド・イノベーションか、外部のスタートアップ等を最大限に有効活用するオープンイノベーションか、あるいはCVCという間接的な手法をとるのか、企業側においてもこれからその手法に関する試行錯誤がもうしばらくは続きそうな雰囲気ですね。
備考:(**)Collective Impact<定義>:
- 様々なプレイヤーが共同して社会課題解決に取り組むための一つのスキームであり、共同の効果を最大化するための枠組みのことを指す。ある特定の社会課題の解決に取り組むプレイヤーは自治体、企業、NPO、政府、財団など様々な分野で多数存在する。そのようなプレイヤーが社会課題解決に個別に取り組むのではなく、Collective(集合的)にインパクトを起こすことを重視し、その実現のための具体的なアプローチを指すこともある。あるいは、異なるセクターにおける様々な主体(⾏政、企業、NPO、財団など)が、共通のゴールを掲げ、お互いの強みを出し合いながら社会課題の解決を⽬指すアプローチ。Isolated Impact(孤立したインパクト)と対を成す概念。
以下は、米大手金融機関のJPモルガン社が全世界の主要大手機関投資家に対して実施をしたサーベイの結果を表しています。「今般のCOVID-19が今後中長期的なESG投資にプラスの影響はあるか?!」との問いに対する回答結果ですが、「そこそこポジティブ」以上を合算すると55%となっており、概ね今回の未曾有のCOVID-19が、今後ESG投資を促進させる動機となったと見られているようです。
参考:https://ideasforgood.jp/glossary/collective-impact/・PubliCo 2016年資料「コレクティブ・インパクト」 (***)https://toyokeizai.net/articles/-/361390
出典:米J.P. Morgan社, Results from the survey “Tracking the ESG implications of the COVID-19 Crisis” 、「Why COVID-19 Could Prove to Be a Major Turning Point for ESG Investing」より。
参考:https://www.morningstar.com/articles/988114/sustainable-funds-weather-downturns-better-than-peers
実際の最近2,3年の資金流入額を見ると、直近10年間と比較すると既にはっきりとその上昇傾向がくっきりと出始めているようですね。以下は、米Morningstar社によるデータですが、北米市場において、ESG関連のファンドへの新規資金流入の推移について表したデータですが、2019年には前年度までと比べてほぼ3倍以上増加、さらに今年にはいってからはそれ以上の加速度で伸びている様子が明白です。凄まじい伸び方ですね。。
参考:https://www.morningstar.com/articles/988114/sustainable-funds-weather-downturns-better-than-peers
実際の最近2,3年の資金流入額を見ると、直近10年間と比較すると既にはっきりとその上昇傾向がくっきりと出始めているようですね。以下は、米Morningstar社によるデータですが、北米市場において、ESG関連のファンドへの新規資金流入の推移について表したデータですが、2019年には前年度までと比べてほぼ3倍以上増加、さらに今年にはいってからはそれ以上の加速度で伸びている様子が明白です。凄まじい伸び方ですね。。
出所:米Morningstar社:https://www.cnbc.com/2020/07/01/coronavirus-major-turning-point-for-responsible-esg-investing-says-jpmorgan.html
最後に、我々日本が所属するアジアにおいてもESG投資は徐々に浸透しつつあるようで、日本においては、2015年に年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)による国連責任投資原則(PRI)への署名が一つの大きなきっかけとなった模様です。昨今のコロナを経て、「ポスト・コロナ」がベンチャー投資のみならず、株式市場投資においても主たるテーマとなるであろうと推測される中、日本の大手企業に置かれては、HR業界であれば「従業員の職場環境」、食品等業界であれば「食と地球持続性」、自動運転やモビリティであれば「地球環境問題~社会インフラ」、等など、それぞれの「社会的責任」「地球持続性」といった課題にどう具現化された取り組みを明示していけるのかが、上記の通り、10年、20年持続的な経営を担う上で、今後着実に投資家(プロ・個人問わず)からの厳しいモニタリングが今まで以上に行われていく可能性がありそうです。これから新しいチャレンジに打って出るスタートアップにとってはチャンスであり、大手企業にとってはイノベーションのチャンスとして捉えることで、良い結果が導き出されて行くと信じています。
最後に、我々日本が所属するアジアにおいてもESG投資は徐々に浸透しつつあるようで、日本においては、2015年に年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)による国連責任投資原則(PRI)への署名が一つの大きなきっかけとなった模様です。昨今のコロナを経て、「ポスト・コロナ」がベンチャー投資のみならず、株式市場投資においても主たるテーマとなるであろうと推測される中、日本の大手企業に置かれては、HR業界であれば「従業員の職場環境」、食品等業界であれば「食と地球持続性」、自動運転やモビリティであれば「地球環境問題~社会インフラ」、等など、それぞれの「社会的責任」「地球持続性」といった課題にどう具現化された取り組みを明示していけるのかが、上記の通り、10年、20年持続的な経営を担う上で、今後着実に投資家(プロ・個人問わず)からの厳しいモニタリングが今まで以上に行われていく可能性がありそうです。これから新しいチャレンジに打って出るスタートアップにとってはチャンスであり、大手企業にとってはイノベーションのチャンスとして捉えることで、良い結果が導き出されて行くと信じています。